明日を迎えられない少女は何を望んでいたのだろうか。
「その子と優香は仲が良かったんですか?」
「そうじゃなくて、むしろ」

 私はさすがにためらう。
 あなたの娘がいじめていたなんて言っていいのだろうか。

「一度、家に来てくださいませんか?」
「わかりました」

 私は彼女の家に行き、言うかどうか決めようと心に誓った。

 私が優香の家に着くと、優香の母親は私を見て申し訳なさそうに頭を下げる。
 優香の母親は私を客間に通し、紅茶を出してくれた。

 私はその紅茶を一口飲む。

「あの子、学校で何があったのですか? 最近よくうなされているみたいだし、夏頃から元気がなくなっていったのは分かっていたんです。聞いてもなんでもないと言って、難しい年頃だし、ある程度は彼女の自主性に任せようと思っていたのですが」
 
 彼女が本当のことを知りたがっているのは伝わってきたが、言うか躊躇った。

 いじめられたほうの親が知っているのにいじめたほうの親がそのことを知らないとはあまりに不平等な気がした。それに加え、松下さんの寂しそうな笑顔が私の背中を押す。
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