明日を迎えられない少女は何を望んでいたのだろうか。
 クラスがざわついていた。クラスの人のほとんどが明香に言われて他の人間も言いなりになっていると思っていたからだろう。私も例外ではなかった。

「それって、まさか大垣?」

 その言葉で大垣君が亜紀子を睨む。

「そうよ」

 あっさりと明香が答える。要は大垣を好きな亜紀子を喜ばせるためにそういうことを陰で言っていたんだろうか。

 クラス中でヒソヒソ話が聞こえる。

 絵里子に向けられていたわずかな同情の視線が一気に冷たいものに変わった。

 その時、由紀が教室内に入ってくる。

「永田の中絶の話って誰に聞いたんだ?」

 由紀は変な顔をするが、自分の席にきた彼女は机の上にあるものを見て、青ざめる。

「大体お前らがあんなことするからこんなことになったんだろう。いい迷惑だよ」

「そうそう。人の命を奪っておいて、今更学校来るなよ。というか、何で警察に捕まらないんだ」

「俺たちとお前が同罪っていうのもお前らの秘密会議の総意?」

 クラスメイトから口々にそんな文句が漏れる。
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