明日を迎えられない少女は何を望んでいたのだろうか。
疑心暗鬼
 教室を出ると、廊下の隅にいた、見たことのない生徒と目が合う。
 彼女たちはそのまま踵を返し、立ち去っていく。

 なんてことはない。
 ただの見物客だろう。

 私たちのクラスは芽衣に呪われている。
 そんな話がもう学校中に広まりつつあった。

 心配で声をかけてくれる友人もいれば、芽衣を見殺しにしたクラスメイトとして見られることもある。そして、今のように興味本位で教室見学に来る生徒までできつつあった。

 私は階段を降りるとため息を吐く。帰る気がせずにぼうっとしていたらこんな時間になってしまったのだ。

 階段を下りた時、話し声が耳に届く。だが、私は誰かが話をしているだけだろうと気にせずに階段をおりる。そして、見知った姿を視界に収めた。

 そこにいたのは岡部君と佐田先生だったのだ。

「岡部君。あなた本当にこのままじゃ」
「俺は知りません。失礼します」

 岡部君は先生に頭を下げると、そのまま階段を下りていく。彼はこちらを見ていないので、私には気付いていないだろう。

< 128 / 193 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop