明日を迎えられない少女は何を望んでいたのだろうか。
 芽衣は教科書をひろうと席に着く。
 彼女は歯を食いしばり、俯いていた。

 そんな彼女に、クラスの男子も女子も親切にしていた。

 芽衣がいじめの標的にされ、彼女の周りにいた人達は姿を消し、彼女は孤立していった。

 正岡はホームルームを終え、すぐに教室を出ていく。

 彼は教室内で何が起こっているのか気付いているのだと思う。

 だが、彼は注意するどころか気づかない振りを貫いている。

 何が起こっても知らなかったですませることが一番だと思っているのか、明香の人脈の広さのせいだろう。

 明香の家は金持ちで、顔も広い。警察や政治家にも知り合いがいると言いふらしていたのを良く耳にする。そして、この学校の学長とも個人的に親しいと聞く。

 そんないろいろ備わった明香には刃向いたくないし、この日々が過ぎることを願っていたんだろう。

 そんな気持ちは分からなくはないが、状況に限度はあると思う。


「大丈夫?」


 私は芽衣のところへ話しかけに行く。

 芽衣は机の上に顔を伏せ、顔を上げようとしない。私の問いかけに対する返事もなかった。
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