明日を迎えられない少女は何を望んでいたのだろうか。
　馬場桃子が泣いてたのだ。その姿を周りの生徒が取り巻くようにして見ている。

　彼女はそんなに親しくない私にも話しかけてきたように、交友関係は比較的広い。

　そんな彼女に声をかけるどころか、遠巻きに見ている姿がある種異様な状況だ。

「どうかしたの？」

　彼女の手には何か写真のようなものが握られている。
　明香たちのことを思い出し、一瞬身震いした。

「これ、何？」
「これだよ」

　私の前に写真が差し出される。


　小さな文具店で、桃子がお店のペンを鞄の中にいれようとしている場面が撮影されていたのだ。

「これって、万引き？」

　その言葉に桃子の肩がびくりと震える。

「たまたま角度でそう見えるだけで、実際はしていないもの」

　そう彼女は泣きじゃくりながら言葉を綴る。

　そうなのだろうか。だが、写真なので判断しにくい。
　ペンの先端を持ち、鞄の入り口付近に近づけるなど、誤解を招きかねない行為だとは思う。

　彼女の発言を借りれば、角度でそう見えるだけで実際は違うのだろう。

　だが、クラスメイトの視線は桃子の言葉を素直には受け止めていないようだ。
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