明日を迎えられない少女は何を望んでいたのだろうか。

「万引きって要は窃盗だからな。本物の犯罪だよ」

 クラスメイトの声に、桃子は顔をひきつらせた。

「万引きって引くわ。だから友達がいじめられても庇わなかったんだよな」
「その後、明香にべったりしていた時期もあったし、納得って感じだよ」

 クラスメイトの言葉に、馬場さんはこぶしを握る。

「だからしていないと言っているじゃない。芽衣のことだってそんなこと言っても、あんな状況になったら庇えるわけないじゃない」

「でも、お前たちが庇っていれば、あいつは死なずに済んだかもな」

「それは他の人だって同じじゃない。ほとんどの人が庇わなかった。きっと私と同じ状況になれば大半の人が同じことをするはずよ」

 馬場さんは声を張りあげる。彼女は明香たちが標的になっているとき笑っていたのにも関わらず。

 こんなことを繰り返してはダメだ。

そう心ではわかっていても、もう一つの冷めた目で彼女たちを見てしまい、芽衣を庇いたいのか、彼女たちを責めたいのか自分の気持ちが分からなくなる。
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