明日を迎えられない少女は何を望んでいたのだろうか。
 私が席に戻ると、いつも一緒に帰る真奈美と目が合う。

 だが、彼女は「今日は用事がある」と言い残すと、そそくさと教室を出て行ってしまった。

 予想はしていたが、やはり彼女を敵にするのは怖いんだろう。

 私は苦笑いを浮かべ、帰り支度を整えると教室を出た。

 私もいつものように明日登校したらいいわけじゃない。

 明日以降何もなければいいが、明日のことは明日にしかわからないだろう。

 何か彼女にされたらどうしよう。

 ブログでも作って、誰でも閲覧できる状態にして、そこに詳細に出来事を記録するか、音声だけでも残しておくか。記録を残しておくことはいろいろと有効らしい。

 明香にされるがままになるつもりは到底なかった。

「竹下さん」

 階段のほうに歩きかけた私は背後から呼び止められる。

 同じクラスの高橋あゆみだった。

 柔らかそうな猫毛の髪の毛に茶色の瞳をした小柄な子で、美人というよりは可愛いという言葉が似合う。

 彼女とは特別仲が良い訳ではないが席が近くのこともあり、クラスの中では比較的会話をするほうだろう。
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