明日を迎えられない少女は何を望んでいたのだろうか。
 私は意外な人に、このタイミングで声をかけられたことに戸惑いを隠せなかった。

「どうかした?」

「竹下さんって強いね。古賀さんって怖くない?」

 私はあゆみの言葉に苦笑いを浮かべる。

「怖いけど、言ってしまったのは仕方ないしね」

「明日以降、大丈夫かな。先生に言っても無駄だよね」

「無駄だと思う。何もないことを期待するよ」

 正岡先生に行っても、軽く流されるだろう。
 となれば校長はどうだろうか。

 校長先生と個人的な付き合いがあるわけではないが、何度か話をしたことがある。彼は私の名前を知っているし、温厚でとても優しい印象を受ける人だ。

「さっき、はらはらしちゃったよ。竹下さんに何かするんじゃないかと思って」

「私もそう思ったけど、今日のところは無事だったね」

 言われてみるとそうだ。

 それに何で歯向かわれるのが嫌いな彼女があっさりと引いたのか。
 ただ、面倒なだけかもしれないが。

 私はふっと気づく。

 私は自分でいうのもなんだが、かなり成績が良い。どんなに調子が悪い時でも、学年で一桁を常にキープしているし、先生たちの覚えもよい。校長先生からも直接名前を憶えられている。

先生たちから卒業後の進路もかなり期待されているみたいなことをそれとなく言われたことも少なくない。

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