明日を迎えられない少女は何を望んでいたのだろうか。
「君はさ、お人好しだよね。放っておいても別にいいと思うよ。誰も君を責めないし、わざわざ泥をかぶらなくてもいいんじゃない? その相手も逆上して君に危害を加えるかもしれない」

「でも、もう後悔したくないんです。お願いします」

 私は松下に頭を下げた。

「どこから話せばいいのか分からないけど、あいつの家っていろいろ複雑でさ。あいつには同じ年の姉がいる」

「それって」

 私の言葉を打ち消すように松下さんが言う。

「想像通り。あいつのお父さんが他所に作った子供だよ。あいつがここに引っ越してきたのに、すぐ引っ越す予定になっていたのは、それが原因らしい。最初は芽衣のお父さんだけ引っ越す予定だったんだ。トラブルになりたくなかったのかもしれない」

 私は松下の言葉に妙に納得してしまった。だから夏前に越してきたばかりの芽衣が転校するということになったのだろう。
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