明日を迎えられない少女は何を望んでいたのだろうか。
「名前は?」

 私の知っている人だろうか。

 私の心臓がどくんと鳴る。

 私の知らない人であればいいと思っていた。

 せめて仲良くない、なぜそんなことをしたのかと言い切れる相手であってほしいと切に願う。

「高橋あゆみって子知っているか?」

 私の脳裏に優しい笑顔を浮かべたあゆみの表情が思い浮かんだ。大人しく、あまり自分の意見を口に出せない少女。

「知っているけど、まさか。だって二人が話すのを見たことない」

「芽衣は一番の親友だと言っていたよ。でも、家族に仲良くしているのを知られたくないから、メールも電話も履歴を消すってね」

 松下は携帯電話を取り出し、私に見せた。そこには確かにあゆみと芽衣が写っていた。二人は決して教室内では見せないような屈託のない笑顔で微笑んでいた。
< 165 / 193 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop