明日を迎えられない少女は何を望んでいたのだろうか。
ある少女の告白
 翌日、私はいつもより早く学校に行く。だが、職員室には寄らない。私は階段の陰に身をひそめ、目的の人が来るのをただ待っていたのだ。

 階段を上がる音がして、私は手すりから顔を覗かせる。

 意外に早く来ている人は多く、今日、手すりから顔を覗かせるのは、これで三度目だった。

 今回は空振りにはならず、私の視界に入ってきたのは予想していた人だ。

 私は彼女が教室の中に入るのを待ち、足音を殺して教室の前まで行く。

 教室内で足音が止まるのを待ち、私はドアを開けた。

 あゆみは絵里子の机の前に立ち、何か紙のようなものを手にしている。

 彼女はそれを後方に隠すと、私を見て笑顔を浮かべる。

「びっくりした。早いね」

「今、何を隠したの?」

 私はドアを閉めてから、そう問いかけた。

「何でもないよ。宿題のプリント。分からなかったから解いていたの」
< 168 / 193 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop