明日を迎えられない少女は何を望んでいたのだろうか。
 あゆみは言葉を続ける。

「もし芽衣のお母さんが芽衣を妊娠しなければ、私の母親と結婚する予定だったんだって」

 あゆみはたいしたことでもないといいたそうに明るい言葉で言う。

「恨んでいたの?」

 あゆみは首を横に振る。

「まさか。そんな父親なんてろくなやつじゃないし、私は産まれて何回かしか会ったことない親に未練なんかない。でも、それは今だから言える話だよね。最初はそうだったかな。私の家はあまり裕福でなくてお母さんが朝から晩まで働いているの。でも、芽衣の家はお母さんは専業主婦で幸せそうだった」


 その彼女の表情が物憂げで切なそうに見えた。

「始めて見てすぐに母親の言っていた腹違いの妹だと分かったの。あの子は私の事を知らずにのうのうと育っているものだと思っていたの。だから、好きになれなかった」

 彼女はそこで言葉を切る。

「でも、そんなことなかった。私があの子に、あなたのお父さんの隠し子だと言ったら、あの子なんて言ってきたと思う?」

 私は分からないと伝えるために、首を横に振る。

「彼女は知っていたの。同じ年の姉が居ることも」

「彼女の母親が彼女に言ったの?」

「みたいね」

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