明日を迎えられない少女は何を望んでいたのだろうか。
「そうじゃないと芽衣があんなとこから落ちるわけがないじゃない。だから、許せなかったの」

 あゆみの目からは大粒の涙が流れる。

 彼女の芽衣を思う気持ちもまた本物だったのだ。

 芽衣が事故なのかそうでないのかには、多くの疑問があった。その疑問が松下さんの話を聞いてから、ある一つの仮説にたどり着いたのだ。

「携帯って便利だよね。それでメールを送れば、その持ち主が送信者で、誰が別の人が成りすましても分からない。あの人達もちょっとした隙をつければすぐにできる」

「そうかもしれないね。私もそう思うもの」

 友人から届いたメールを他の誰かが送ってくれているなんて考えもしない。

「私もあの人たちが悪かったと感じてくれているのならそこまでしなかったのかも知れない。でも、あの人たちには反省する気持ちは微塵もなくて、芽衣のお母さんや松下さんと違って犯人を知っている分無視できなかった」

 確かに芽衣が死んだ後でさえ、明香たちが反省している様子はなかった。それどころか悪いのは自分でないと言い張っていたのだから。
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