明日を迎えられない少女は何を望んでいたのだろうか。
「先生、お願いがあります」

「何?」

 彼女は眉間にしわを寄せ私を見る。

「屋上の鍵をちょっと貸して欲しいんですが」

「ダメよ。あんな事故があったばかりなのよ。危ないでしょう」

「十分だけお願いします。すぐ戻しに来るし、柵にも近寄りません」

「理由は?」

「誰にも言わないでくれますか?」

「理由次第よ」

 先生は微笑む。

「永田さんが、転落したとき何かを探していたらしいの。だから、せめてそれだけでも探してあげたいんです」

 永田さんという名前に先生は反応した。

「どういうこと?」

 私は優香から聞いた話をかいつまんで説明する。

 その話に先生の顔が青ざめていく。

「あの子たちは、そんなことを」

 彼女は深呼吸をすると立ち上がり、職員室の奥に行く。彼女は鍵を片手に戻ってきた。

「ただ、生徒だけを立ち入らせることはできない。私も一緒に行くわ。それがだめならあきらめなさい」

「ありがとうございます。お願いします」

 私は先生に深々と頭を下げた。

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