明日を迎えられない少女は何を望んでいたのだろうか。
「いろいろありがとう」

　校舎を後にした時、あゆみは寂しそうに微笑みながらそう言葉を漏らした。

　私は首を横に振った。

　彼女が探しているものを見つけることができなかった。

　もし、もっと早く優香にその話を聞いていたら見つけることができたかもしれないのに。

　彼女が亡くなってから今までの時間がもどかしい。

　私と並んで歩いていたあゆみの足が止まり、私も足を止めあゆみを見た。

「少しだけ中庭に行っていい？」

　もうそろそろ部活も完全に終わる時間だ。だが、それくらいならまだ余裕がある。

　私はあゆみの言葉に頷く。

　あゆみは私にお礼を言うと歩き出す。

　私はそんな彼女の後を追った。

　花が植えてある場所であゆみは立ち止まる。

　芽衣が亡くなっていた場所だ。

　あゆみは目を閉じると両手を合わせる。

「ごめんね」

　あゆみは小さな声でそう呟いた。

　私は何も言えなくなる。
< 188 / 193 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop