明日を迎えられない少女は何を望んでいたのだろうか。
 そのとき私の頬に何かが触れるのが分かった。私は何気なく、振り向く。

 そのとき微かに何かがはじけるような音が聞こえた。

 空耳かもしれない。そう思っても、私は音がした方向まで歩いていく。

 なぜかは分からないけれど、誰かが私を呼んでいる、そんな気がした。

 私は先ほどから五メートルほど離れた場所に立っていた。

 確かにさっきここで音がした気がした。

 私は意を決して花壇に植えられている木の幹を動かした。

 ぽんと何かが落ちる。

 私はそれを見て、思わず飛びついていた。そして、汚れを払う。

 色はくすみ、ぼろぼろになっている。でも、それは確かに芽衣のしていたストラップだ。

 さっきと同じ感覚が私を包む。

 何かが傍に居るような気がするが、その何かを決して視界に収める事は出来ない。

 私は芽衣のことを脳裏に思い描き、校舎を見上げる。

 芽衣の転落場所とは少し離れている。


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