明日を迎えられない少女は何を望んでいたのだろうか。
あゆみは困ったような笑みを浮かべる。
このタイミングで私を気遣って話しかけてくれる彼女は本当に人が良いんだろう。
そして、同時に明香の行動に対して自分が出来る選択肢を探している気がした。
「こういうときは加害者にはならないようにしたらいいと思うよ」
「でも、傍観者でいるのも本当はよくないよね」
「そうかもしれないけど、少しずつ悪いという雰囲気を作っていけば、明香もしにくくなって変わっていくかもしれないと思うの。彼女は『悪人』にはなりたくないみたいだしね」
「そうだね。教室の空気を変えるか。難しいかもしれないけど、他の友達にも少しずつ話をしてみるよ」
私は彼女の言葉に頷いた。
「竹下さんは強くて優しい人だね」
そうあゆみのきらきらとした目に見られ、私は戸惑いながらも会釈した。
その時、あゆみを呼ぶ声が聞こえた。隣にクラスの、彼女と同じ文芸部に所属している子だ。
「また明日ね」
あゆみの言葉に頷くと、私と彼女はその場で別れた。