明日を迎えられない少女は何を望んでいたのだろうか。
私は色と形を芽衣から聞きだし、携帯ストラップを探すことにした。シルバーのもので、先にふわふわのぼんぼんがついているそうだ。
だが、芽衣の席の近くでは、そうしたものは見当たらない。私は探す範囲を広げる事にした。
念のため、明香の机を調べるが、彼女の机の中にはなかった。
「もういいよ」
いつの間にか太陽が傾き、日が沈みかけている。帰宅を促す校内放送が流れ始めていた。そろそろ先生たちの見回りが始まる。
「もう少しだけ」
私は教室の後方にある生徒たちのロッカーまで歩いていく。窓際から廊下に駆けて、その中を一つずつ確認するが、見つからない。だが、ふと顔をあげた私の目に、そのストラップが飛び込んできた。
私はストラップを拾い、芽衣に手渡す。
芽衣の表情が明るくなる。
「ありがとう」
笑顔の芽衣を見て、彼女がこんな風に微笑む子だということをすっかり忘れていたような気がする。
私は芽衣ともっと話をしてみたい、そう思った。
「良かったら途中まで一緒に帰らない? 同じ方向だし」
「でも」
渋る芽衣の肩を叩く。
「友達になろうよ。私、永田さんと話をしてみたいんだ」
芽衣はその言葉に目を見開き、優しく微笑んだ。