明日を迎えられない少女は何を望んでいたのだろうか。
半泣き状態の少女の声が聞こえてきた。
「あの綺麗な子? あの子って最近いじめにあっていたよね」
「そうそう。好きな男を取られてひがんでいたって噂だよね」
「そんなことあの人たちに聞かれたらやばいって」
二人の友人なのか、別の少女が二人の会話を遮った。
「そうだね」
半泣きの子がしゃくりながらそう呟いた。
私はその足で教室に向かう。明香たちは昨日は早めに帰ったが、いつもは授業が終わったあともよく教室で話をしているからだ。
私が教室の扉を開けると、数人の女生徒が輪を作っていた。
その中心に明香がいた。
「古賀さん、あなた今日、永田さんに何かした?」
「何で優等生さんは学校に来ているの? 病気で欠席していたのに元気そう。もう授業は終わっているのだけど。もしかして仮病? 優等生でも授業をさぼりたいときがあるんだね」
彼女は私の問いの答えるどころか、挑発的な言葉を返す。
「ふざけないで」
私は明香のところまで歩み寄っていくと、彼女の胸倉を掴んだ。
明香は一度目を見張るが、すぐに目を細め笑みを浮かべる。
「暴力を振るうつもり? 上等よ。あなたの味方がいなくなったらこっちもやりやすくなる」