明日を迎えられない少女は何を望んでいたのだろうか。
 私はどこまでも自己中心的なことを言う明香に嫌悪感を示す。

「いつもと変わらないよ。ねえ」

 亜紀子が保田優香にっと笑いかける。

 優香も愉快そうに笑う。

 彼女たちの日常は当たり前のように芽衣をいじめることだろう。

「さっき誰かが救急車で運ばれたの」

「へえ。運動部でも怪我したの?」

「警察も来ていた」

 亜紀子が興味深そうに窓の外を覗き込む。

「何だろう。何か刑事ドラマみたいだね」

 私は古賀明香から手を離した。

 明香は私を睨むと窓辺に行き、顔を覗かせる。

「何? あれ」

「誰かが上から落ちてね、永田さんらしき人だったと言っている人がいたの」

 その時、明香とその取り巻き立ちの顔がさっと引きつる。

 その時、教室の扉が開き、あゆみが息を切らせて入ってきた。彼女の目には大粒の涙が浮かんでいる。

「あれ、竹下さん、今日休みだったんじゃないの?」

「ちょっとね。どうしたの?」

 彼女は私に駆け寄ってくると、わっと泣き出した。

「さっき、永田さんが転落したと、先生たちが言っていたの」

 明香の表情がさっと青ざめていくのが分かった。
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