明日を迎えられない少女は何を望んでいたのだろうか。
　瞳は綺麗な二重をしており、学生服姿であっても十分映える。明香が芽衣の好きな相手として名前をあげていた人物だ。

　彼は端の席に座り、唇をきっと噛む。そして、芽衣の写真をじっと見つめていた。

友達だったとしても悲しいだろう。

だが、彼の強い瞳には、それ以上の気持ちが見え隠れしていた。

もしかすると二人は私たちが知らないだけで付き合っていたのかもしれない。


　それから芽衣の父親が入ってきて、深々と正岡に挨拶をしていた。

　正岡は最初は卒なく応じていたが、次第に罪悪感に苛まれたのか、最後には芽衣の両親と目を合わせる事さえ避けているような気がした。




　芽衣の死は事故死と断定された。芽衣が何らかの理由でフェンスを乗り越えたのだ。

　もともと屋上は一般生徒は立ち入り禁止になっているが、鍵自体は職員室においてあり、いつでも取れる状態だった。

　学校側は警察に生徒には直接話を聞かないようにと促し、生徒側にも余計な話はしないようにと箝口令を敷いていた。

　生徒の間では自殺ではないかというが広がり、学校生活になじめずに落ち込んでいたという証言を一部の生徒が警察にしていたという噂とがまことしやかにささやかれていた。

< 29 / 193 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop