明日を迎えられない少女は何を望んでいたのだろうか。
彼女は芽衣の鞄から取り出した、ワインレッドの携帯を明香に向かって投げる。
芽衣が手を伸ばそうとするが、携帯は明香の手の中に納まった。
「やめて」
芽衣は涙ぐんだ声を発しながら、携帯を奪おうとするが、鞄から手を離した亜紀子にその場に押さえつけられた。
芽衣のライトブラウンの髪が床に垂れている。
クラスがしんと静まり返る。
もう興味本位でそのやり取りをみつめるものはいないだろう。
今のような状況になったのは、二学期に入ってすぐだ。
突然で、いつからというのはよくわからない。
それまでクラスの中での二人の立ち位置は、明香がクラスの中心的な人物で、顔が広い。
芽衣は友人も多いがおとなしく、決してクラスの中心になるようなタイプではなかった。
自分が目上と認めた人に対しては口調が柔らかく笑顔になる明香に比べ、芽衣は誰とでも分け隔てなく接する子だった。
そんな二人はほとんど話をする機会もなかった。芽衣は同じクラスの人としか彼女を認識していなかっただろう。
だが、明香がそうでないのは誰の目にも明らかだった。
芽衣が手を伸ばそうとするが、携帯は明香の手の中に納まった。
「やめて」
芽衣は涙ぐんだ声を発しながら、携帯を奪おうとするが、鞄から手を離した亜紀子にその場に押さえつけられた。
芽衣のライトブラウンの髪が床に垂れている。
クラスがしんと静まり返る。
もう興味本位でそのやり取りをみつめるものはいないだろう。
今のような状況になったのは、二学期に入ってすぐだ。
突然で、いつからというのはよくわからない。
それまでクラスの中での二人の立ち位置は、明香がクラスの中心的な人物で、顔が広い。
芽衣は友人も多いがおとなしく、決してクラスの中心になるようなタイプではなかった。
自分が目上と認めた人に対しては口調が柔らかく笑顔になる明香に比べ、芽衣は誰とでも分け隔てなく接する子だった。
そんな二人はほとんど話をする機会もなかった。芽衣は同じクラスの人としか彼女を認識していなかっただろう。
だが、明香がそうでないのは誰の目にも明らかだった。