明日を迎えられない少女は何を望んでいたのだろうか。
 優香や由紀は部屋の中を探しているが、明香はぶすっとした態度で部屋に座っている。そんな彼女を由紀や亜紀子がなだめている。

 こういう生徒を持つと先生たちに同情したくなる。

 六人が眠れる程の畳の部屋とテレビ。そして奥には外を仰げる全面ガラス張りのテーブルの置いてある狭い空間がある。

 荷物を一つに固め、部屋の中を見渡すがどこにも明香のポーチはない。浴室、テレビの裏、トイレとあらゆる部屋を探してみるが見つからなかった。

「やっぱり他の生徒が盗ったんじゃないですか?」

「もう少し探してみてから」

 佐田先生が慌てた様子で彼女をいさめる。

 私はその部屋の中で探していない場所はないかと目を走らせる。

 私は誰も触っていない場所を片っ端から探すことにした。

 まず気になったのは座布団の下だ。座布団は旅館に着いた時は部屋の隅に重ねられていたが、明香たちはほとんど使わずに私達の部屋にやってきたのだろう。

 私はそこに行くと座布団を纏めて動かすが、何もない。だが、その時、中央部分に妙なふくらみがあるのに気付いた。

 私が座布団を一枚ずつ動かしていくと、黒いポーチが出てきたのだ。
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