明日を迎えられない少女は何を望んでいたのだろうか。
 だが、クラスメイトが絵里子を気にしなくなったというわけではないようだ。

「針を忘れちゃって、貸してくれないかな」

「ごめん。私、余分なのはないんだ」

「そう」

 彼女は隣にいるショートの女の子に親しげにはなしかける。

「ごめん、私も」

「そうなんだね。真紀、針かして」

 彼女は席の離れた真紀のところまで行くと針を借りていた。

 そんな彼女を見たのは家庭科の時間だ。

 いつもなら快く貸す人も少なくない。だが、みんな心なしか絵里子との距離を置いているようで、その会話も必要最小限のものに限られる。

 事件後、あゆみたちのように絵里子たちと距離を取る人もいた。

だが、大部分が同じように接していた。今距離を取ろうとしている人達は、クラスで孤立しかけている彼女と極力関わらないようにしたかったんだろうか。

 絵里子のしでかしたことは自業自得だとはおもう。だが、私は言葉でははっきりと言い合わらせないやるせない気持ちを胸に抱いていた。
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