明日を迎えられない少女は何を望んでいたのだろうか。
「絶対に言いません」

「ありがとう」

 ここから去ろうとしている彼女に、いつ引っ越すかは聞けない。
 私が芽衣に触れられる最後の機会になるだろう。

 このまま帰ることも考えた。
 でも、もう少しだけ私は知りたかったのだ。
 彼女が何を考えていたのか。

 それに触れるには今しかないと思ったのだ。

 私は迷う心を断ち切るために、拳を握る。

「芽衣の携帯と、部屋を見せてくれませんか?」

 芽衣の母親は驚きながらも、私の頼みを受け入れてくれた。

 ただ、芽衣の部屋はもう荷物をほとんど片付けてしまい、もう別の場所に送ってしまったらしい。

 芽衣の部屋は二階の一番手前の部屋だ。彼女の部屋の扉を開けると、もうほとんど荷物は残っていなかった。

 ただ、机の上にはポツリと携帯が置いてあった。

 芽衣の携帯には母親のいったように、ほとんどデータは残っていなかった。写真さえも削除されていたのだ。

 学校で楽しく笑っていた芽衣を知っているだけに、現状がやるせなかった。


 翌日から加古川絵里子は学校に来なくなった。
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