【短編】2月14日

 クラスの男がそわそわしているように感じるのは、きっと今日がバレンタインデーだからだろう。

 女の子がチョコを溶かして固めたものをばら撒く、菓子業界に踊らされる日だ。

「おい、日向、お前いくつチョコ貰った?」

 隣の席の花井にそう聞かれて、カバンの中にあるチョコを確認する…ふりをした。

「5、6個かな」

 実際カバンの中にあるチョコの数なんて数えるのも面倒だ。

 ザッと20は超えている。

「いいなあ、モテるやつは」

「そんなことないよ」

 バレンタイン…か。

 君も誰かにチョコを渡すのだろうか。

 今までは女友だちへのチョコと、僕への義理チョコしか渡していなかった。

 できれば今年もそうであって欲しい。

 たくさんのチョコがカバンに詰められている中、君からのチョコだけは別にするために袋を持ってきてある。

 義理でも良いと、ずっと思っていた。

 いつからだろう、君が本命チョコを作ることに恐怖を覚え始めたのは。

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