【短編】2月14日

「日向くん…これ」

 放課後、君を待っている僕に、西城さんがチョコレートを渡してきた。

「え…僕に?」

「うん、それと…」

 いつもとは違い、頬を紅色に染め、目が泳いでる彼女は、勇気を振り絞ったように言った。

「好きです、付き合ってください」

 ああ、わかってた、わかってたよ。

 なんてわかりやすい人なんだろう。

 呆れるほどにわかりやすい。

 これが理想の女の子、学校のマドンナ、付き合いたい女の子堂々第一位か。

 なんて馬鹿げていて魅力の無い…。

「えー…っと、僕、他に好きな人がいて…」

「…っ!」

 その顔、なんでも持っている西城さんでもするんだ。

 勝利を確信したあとの絶望と、過剰な自信への羞恥、何かを察したかのような嫉妬に満ちたその醜い表情。

 僕が何度見ても、殴り潰したくなるような大嫌いな表情。

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