くすんだ街
その日の夜、寮に戻るとスグルは工場長から部屋に来るよう言われた。


「なんですか?」
「いやね、君が今日変な行動を取っていたと耳に挟んだんだが」


やはり、誰かに見られていたのか。

スグルは内心で舌打ちをしたが、機械のふりをすることに慣れていたため、その気持ちを表に出さずに

「覚えがありません」

と、短く答えた。
蛇のように狡猾そうな工場長はスグルを凝視し

「なら、いいんだがね」

と、唇の端を歪めて笑った。

心を見透かされているようで落ち着かなくなる。
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