くすんだ街
気を取り直してスグルは無人の改札を抜ける。
と、大きな商店街が広がっていた。

静かなところだ。スグルは思った。
無駄な音は何一つとしてなかった。

人は多く行きかってはいるが、誰一人会話を交わすものはいない。

すれ違う人は、みな貼り付けたように無表情だった。

ただ一つ聞こえるのは街の中央にある工場から漏れ聞こえる機械の稼動音。

これから働くことになる場所――
スグルは、得も知れない不安を感じた。


そして、その不安は奇しくも的中していた。
< 3 / 63 >

この作品をシェア

pagetop