くすんだ街
トウカはそれを知り泣き出しそうになった。

心を失くしていた方が幸せだったかも知れないとさえ思った。

しかし、そんな気持ちを打ち殺すために必死に少年のことを考えた。

自分がここで屈してしまえば二度と少年が心を取り戻すことができなくなる。

これからどうするか、それだけを考えるしかない。

そこまで考えてトウカは嫌な視線を体に感じた。

怪しまれないように自然に顔をあげると工場長が自分を見ている。

もう時間はあまりないのかもしれない


――トウカは完璧に作った無表情のまま作業を再開した。
< 31 / 63 >

この作品をシェア

pagetop