くすんだ街
そこまで考えて、ふとスグルはあることに気づいた。

彼女に話しかけられたことは明らかに工場長に報告するべきことだった。

しかし、スグルは報告をしなかった。


彼女が誰にも言ってはいけないと言ったからだろうか?

――理由はそれ以外にあるような気がした。



次の日。

スグルが作業を終える頃にはもう日も暮れて辺りは真っ暗になっていた。

それでも、スグルは昨日、女と約束したとおりに丘に向かった。

こんなに遅くなってしまっては、彼女は帰ってしまっているだろうに――

どうしてこんな行動をとってしまうのか、スグルは自分自身に戸惑いを覚えていた。
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