くすんだ街
「来てくれないかと思ってた……でも、来てくれてよかった」


スグルは彼女の反応にさらなる息苦しさを感じながら、小さく頷き、彼女から少し離れた場所に腰を下ろす。

心のどこかに彼女の温かい声が染込んでいくような気がした。

それ以上、彼女はなにも言葉を発しようとはしなかった。

無論、スグルもそうだった。

二人は並んだまま、しばらく街を見下ろしていた。
< 43 / 63 >

この作品をシェア

pagetop