くすんだ街
工場長の話を聞き終わり、用意された部屋のベッドの上でスグルはあることを思い出していた。


『その街に行く時は感情を決して見せてはいけない』


確かにそんな話をどこかで聞いたことがある。

てっきり子供を怖がらせるための御伽噺だと思っていたが、ここがその街だったのか……気づいて少しだけ目頭が熱くなった。

しかし、スグルは泣きはしなかった。
涙は、感情だからだ。


この時、スグルは機械のように振舞っていくことを決意していた。
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