くすんだ街
色のないくすんだこの街でなぜかその女性だけが輝きを持っているように感じられた。

スグルは、じっとその女性を見つめた。
伏目がちな瞳、艶やかでキレイなロングヘアを無造作に後ろで束ねており、ぱっと目には他の少女たちと変わらないような気もする。

では、なぜ違うと思うのか――
考えても答えは出てこなかった。

しかし、その女性の姿を見ることで、自分は機械にならずにこのままでいられるかもしれないとスグルは思った。

次の日から、スグルは作業をいち早く仕上げ、余った時間で女性を観察することにした。

黙々と作業する女性とは一度も視線が交差することはなかったが、スグルにはそれでもよかった。
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