くすんだ街
それから1ケ月がたった。

同じ作業場の少年たちとは作業に必要なことを聞くために話をすることはあったが、女性とは作業場も離れており、まったく接する機会がないため一度も話したことはなかった。

それでもまだなおスグルは女性を見るというたった一つのことを心のよりどころとしていた。

一日の作業が終わった工場から寮へ向かう道すがら、スグルは偶然、女性が一人で帰っていく姿を見つけた。

スグルは、同じ寮に住む少年たちの群れから不自然に思われないようにはぐれ、ゆっくりゆっくり女性を追いかけた。

誰に見られても自然なように――
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