美味しいほっぺにくちづけて。
午後過ぎになり、お客さまも少し疎らになる時間。


伊吹さんが、いろはにやって来た。



「いらっしゃいませ!」




伊吹さんが入ってくるのが分かり、元気良く声をかけると、伊吹さんの後ろに可愛らしい女の人が続けて入って来た。



・・・・・誰?




咲良さんは、嬉しそうに伊吹さんと後から来た女の人に声をかけると、伊吹さんは照れくさそうに女の人を見た。



「花菜ちゃん、久しぶりだね〜!」


“花菜ちゃん”と呼ばれたその人は、伊吹さんとお似合いで、優しそうな人だ。



咲良さんは注文をお願いと私に気づいて、ニコっと笑った。



伊吹さんには、こんなに可愛らしい彼女さんがいたことを今日初めて知った私は、ショックを受けてしまったのだった。


知らなくて当たり前なのに、知らなかったことに後悔していた。


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