美味しいほっぺにくちづけて。
私は、知らずのうちに、胸に当てていた手を離し、両手をぎゅうと握り合せていた。


バクバク・・バクバク・・・


そして、また自分の鼓動が伝わってくる。
血が身体を一周しちゃったような、変な感覚になり、ふらっと身体が揺れる。


でも、その人を見逃してはいけない。
見ていたい、ずっとずっと、目に焼けつけたい。



笑って私をからかうその優しい声も、頭を撫でてくれる大きな掌も、綺麗な手をして、ギターを弾いてくれたあの日の出来事も。



空さんがくれた、たくさんの言葉も・・・




『なんで、そんな泣きそうな顔してんの?』



『あー・・・なんか心配で、どうしても声が聞きたくて。』



『小海は、世界に一人しかいないんだから。』



『がんばれ。』




たくさんの言葉が、溢れて来る。泣いちゃダメなのは分かってる。
戻れない空さんとの時間は私の・・大好きな時間だったんだ。


空さん・・・また、頭を撫でてくれる?




「うみ・・・・泣いてんの?」



「うぅ・・・」


なんで泣いてるのか、もはや自分でも分からない。空さんが、私から離れちゃうと思ったら、泪が止まらないんだもん。



別に、空さんは私のなんでもないのにね。



「うみ、空さんってREYのボーカルだったんだね。」



空さん、私は世界一・・空さんの声が大好き。



シークレットだったバンドは、今日お披露目をした。


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