美味しいほっぺにくちづけて。
「!?」


私は訳も分からず、あっとゆう間に進行方向から逆方向を向かされ、あっとゆう間に手を握られたかと思ったら、空さんが手を引っ張って、私を連れ出した。


強く、離してはくれないほど強く私の手を握る空さんの右手。



遠くで、咲良さんの声がしたけど、私には聞こえなかった。

ただ、まっすぐに空さんの背中を見ていた。少し汗をかいていたようで少し濡れている。


ステージ上で見た空さんとは思えない。同じ人だよね?



「わりィ、驚いた?色々、驚いた?」


私の方を向かずに言葉を灯す空さん。



空さんは、そう云ってただ謝ってくる。それは、歌手を目指してるって言わなくてごめんなってこと?



「色々驚きますよ!・・・空さん、かっこ良すぎっス。」



かっこ良くて、かっこ良くて、かっこ良すぎでしたよ、空さん。


背中越しの空さんを見ると、薄っすら耳が赤く感じる。


空さんは、話し始めた。


「中々決心が付かなくて・・・でもおまえががんばってるのを見て、決心が着いた。俺は、おまえみたいながんばってる奴のために歌を歌いたい、って思った。」



空さんの声が好き。

空さんが、好きです。




「がんばれ、って言って欲しい。小海にがんばれって言われたらやっていける気がするんだ。」



握られた手からは、空さんの本気を感じる。


空さんの背中を見ながら、空さんに届いて欲しくて、私は精一杯、空さんに伝えるよ。


空さんにたくさん励まされたから、今度は私が励ます番。



「空さん、がんばれ・・がんばれ・・がんばって下さい。」


伝えられてる?

届いてる?


私の声を頼りに空さんは振り返った。

空さんを見て泣きそうになる。
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