美味しいほっぺにくちづけて。
「小海。」



そう私の名前を呼びながら、だんだんと私に近づく空さん。

ぎょっ!とびっくりして体を遠ざけると、一瞬にして空さんの右手が私の右手を捉えた。



「逃げるな。」



空さんのいちいち強気な口調なのも、男らしいと思ってしまうし、何せその整っている顔に吸い込まれてしまう。




「空さん、これはどんな状況ですか?」



吸い込まれそうなのに、空さんを見ると私は、頬に朱が注ぐのが自分でも分かる。

なんか恥ずかしくて、目を外したくなる。



「もう、おまえ黙れって。何が悪いんだよ、一目惚れした奴を目の前に、じっとしてられる訳あるか。」



「えぇ!・・ひ、ひと・・・」



思わず目眩がしそうになって、私は、息を静かに呑んだ。空さんは「一目惚れ」と一言呟いて、私に近づくと、私の顎を優しくクイっと引き上げた。



そして、だんだんと唇が近づく。



「ん!?」


唇と唇が重なるとき、目を驚いて閉じれなかった。

なんか変な声も出ちゃうし、恥ずかしい!


空さんの唇は、暖かくて優しいけどさ・・・



ゆっくりと唇が離れる。



「空さん、これ何?」



空さんの顔をただ見つめて問いかけた。



「ばぁか・・・恋の味、だろ?」



「恋の味?」



「そう、恋の味だよ。」



静かに瞳を閉じれば、空さんがまた近づいて私にキスをする。


二回目のキスは、目を閉じた。
とても、誠実で空さんを感じるキスだった。


ゆっくりゆっくりくちづけをした。

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