美味しいほっぺにくちづけて。
「お袋さんは?」



「あぁ、ピンピンしてる。もっと、早く連絡を取るべきだった。お袋の病気がまぁ良くなって再発をしない年になるまでどうしてか、落ち着かなくて。でも、お袋も今ではピンピンしてる。」


俺は心底ホッとした。


あのとき、俺たちはデビューしたてで、事務所が新しい他にはない歌い手を掴みたいらしく、俺たちは顔を見せないシークレット歌手として売れ始めた頃だった。


売れ初めた一年後、俺と昴のケンカがぼっ発してしまった。




「今考えると、グループの一人が少し休業するだけでへこたれてちゃいけなかったよな。なんで、俺らでがんばるからって言えなかったんだろうな。」



俺は、昴の母ちゃんの体調がおもわしくないと知っていたのに、昴がしばらく帰省すると言い出したとき、それを認めてやれなかった。


売れるとき売れたかっただけの二五歳だった俺・・・


一大事なのに、家族だったのに。



今になると、分かるよ。




「でさぁ、俺四年間、自分を見つめる旅に行って来たんだ。一人旅!楽しかったぜぇ!!あ、そうだ、土産あったんだ!!」 



「「「一人旅かよ!?」」」


昴が余りにも楽しそうに話すから、面を喰らう。



「楽しかったぜぇ!世界を見てきた。曲も書いて、作詞もして、唄って、唄って、唄いまくった!」




「はぁ〜?誘えよ、昴ちゃん!!!」


楽しそうにドデカイかばんから昴は、みんなに土産を配っていく。

嵐は、悔しのか大声を上げた。

中には、へんてこな人形や、置物。はたまた、すごいきれいな地平線が広いスカイブルーの海の写真。

その海は、すげーきれいだった。


「この写真、もらって良いか?」


二つ返事で昴は、ニコッと頷いてくれた。

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