美味しいほっぺにくちづけて。
「小海、あいつらに、持って行ってやって。」



「あ、はい!」



咲良さんに言われ、おぼんの上に美味しそうに飾られたのは、いちご大福。


モチモチしていて見るだけに美味しそうなそれを丁寧に持ち、二人のそばへ行く。



「おまちどうさまです。」




いちご大福と、添えられたお茶をテーブルの上に置くと、伊吹さんも空さんも「ありがとう」言って美味しそうに食べ始めた。




「小海ちゃん、仕事こなしてるね。」



「えぇ!全然です!まだまだ覚えなきゃならないことがいっぱいで・・・」




「そういえば、小海ちゃんいくつだっけ?」



「二十三歳です・・・」

伊吹さんは、いちご大福に付いている白い粉を口先に付けながら私に聞いた。


もういい年なのに、成長しないって思ってないかな・・・


ちょこっと、粉を付けている伊吹さんがなんともかわいいのだが・・



そうなのです、まだまだ見習いの身の私は、覚えることがたくさんある。


「咲良も見習いの時期は長かったし、がんばれよな、小海ちゃん。」

伊吹さんは、笑顔で“頑張れ”と言ってくれる。


「はい!!」


優しい・・・


「伊吹は小海に甘いからなぁ。それよか、小海・・・この前コケてにズボンに穴開けて帰って来たんだって?」




「え、ちょっと、何で知ってるんですか!?」


空さんは、“咲良が言ってた”と苦笑いをしている。
なんか恥ずかし・・・




「そんなんじゃ、ゆかりさんにガミガミ言われそうだな。」




「あはは・・」



図星だった私は、苦笑いをするしかない。


ゆかりさんとは、いろはで何年も働いている、ベテラン主婦だ。



「がんばれ。」



空さんは、くくくっと笑ったと思ったら、その一言だけ言ってくれた。


がんばれが、ドジな私のがんばるチカラになるってこと私は知っている。

伊吹さんも、空さんもがんばるチカラを私にくれる。
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