美味しいほっぺにくちづけて。
駅まで、距離がある。



「はぁ、はぁ」



私は、自転車でもあればと、もどかしい気持ちになった。

走ってから、電車に乗るから、走るのが意味があるのかと思ったけど、私は走るしかなかった。





「小海っっ!!!」




誰かに、名前を呼ばれ、振り返る。
いつも聞いている声が私を呼ぶ。



「空さん!?」




空さんが顔を渋くさせて、はぁ、はぁと息をのんだ。少年のように、汗だくで、自転車を私の目の前で急停止する。



「駅までで悪いけど、送る。」




「え?」




早くしろと、無理やり空さんの乗っている自転車の後ろへ、腕を引かれ乗せられると、空さんは、自分の腰周りに私の両手を力づくで、回した。



一瞬のことで、言葉も出なかった。


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