美味しいほっぺにくちづけて。
「はい」



海までもう少しだ。坂を下れば、もうすぐで、広い海。


小さい頃から、いつもここにある海。






『・・・・あ、小海?』




電波の向こう側から、優しい声が聞こえて来た。いつも、私の話を聞いてくれる人。


なんで、そんな優しく私を呼ぶの?
それとも、その優しい声はニセモノですか?



私は、その声の人に返事を返す。




「え・・・・空さん?」




『朝いちから、悪い。今、大丈夫か?』



私は、“大丈夫です”と返事をすると、空さんの声が少し安定した気がした。

空さんは、朝しか時間がなさそうだからと、今日は忙しくなりそうだと、電話の向こうで、少し笑ったのが分かった。




「どうしたんですか?」



空さんから電話なんて、滅多にないから少し、びっくりする。



『あー・・・心配で、声がどうしても、聞きたくて』




咲良から、私の電話番号を教えてもらった、と空さんは言った。
なんだか、空さんがすぐ横にいるかの様。



「あはは、空さん・・・こんな時に、乙女をからかうもんじゃありませんよぉ。」



いつものからかいは、今は無くていいですよ、空さん。



『ちげぇし・・・』



「はい?」



『もう、おまえはほんとにすっとこどっこいだな。』


すっとこどっこい・・・・!?


空さんの顔を思い浮かべる。
私のことをそう言って少し笑っているような。




『おまえが、すっとこどっこい過ぎて心配になるんだ、俺は。』


はぁ〜ときの抜けた声をしてしまうと、空さんはちょっと無言になった。
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