美味しいほっぺにくちづけて。

優しい歌声

「千晴さん、お腹大きくなりましたね。」



「そうなの、もう8ケ月だよ〜!」



比較的穏やかな午後、私は厨房に立っていた千晴さんに声をかけた。
千晴さんのお腹には赤ちゃんがいる。
千晴さんは“もう少しで、マタニティライフも終わりか”と自分のお腹を愛おしそうに撫でた。


咲良さんも、いろはのみんなも千晴さんの体調を気にしつつ、千晴さんは、仕事に出てくれてるけど、やっぱり心配だよ・・・・



千晴さんが“触って触って”と言うので、私はお言葉に甘えてお腹を触らせてもらった。



「うわ〜~〜!」



「あはは、うみちゃん感動し過ぎ。」



千晴さんのお腹を触ると、あたたかくて、ここに赤ちゃんがいるんだと胸がいっぱいになった。



千晴さんは、私をたまに“うみちゃん”と呼んでくたりする。


私の小さい頃からのあだ名の様なものだ。うちの両親もそう呼ぶし。



「咲良ちゃんもねオーバーすぎるリアクションなんだよ!」


“大げさなんだよねぇ”と千晴さんは、母の顔をして笑っていた。


すくすくと無事に育ってほしい。





「お腹に赤ちゃんがいるって、愛しいわよね。」


お店にいた、ゆかりさんが戻って来たと思ったら、千晴さんのお腹を優しく撫でる。



「ゆかりさんがそばにいてくれて、ありがたいですよ。」


千晴さんが、優しく笑うと、ゆかりさんは私も母親だからね!と今日一番の笑顔をして言った。


< 8 / 231 >

この作品をシェア

pagetop