美味しいほっぺにくちづけて。

近い距離


おばあちゃんが旅立った。
その日は、天気も晴れ晴れしていて、雨なんて、まるっきし降りはしなかった。



私たち家族は、馴れない喪服を着て、みんなでおばあちゃんを見送った。




涙は、不思議と出ない。
哀しいし、淋しいはずなのに、涙なんて出なかった。




「うみちゃん、夜、何時に帰る?」




「うーん、八時過ぎの特急で帰るよ。」




「そう。じゃあ、それまで体調整えておきなさい。明日から、いつもの日常に戻るんだからさ。」




お母さんに聞かれ、頷く。
ケータイで時間を調べたページを確認すると、ケータイを閉じた。



お母さんに言われた通り、帰る時間まで、少し時間があるから、ちょっとだけゆっくり出来るかな・・・




七星祭りは無事終わったと、昨日、美玲から連絡があった。



和樹と美玲、そして私の三人で提案した、動物まんじゅうは、咲良さんと千晴さんも手伝ってくれて、大盛況で完売したらしい。



そして、空さん目当てで来るお客さまが耐えなかったみたいだ。
空さんは、美味しいお茶を立ててくれて、アイドル顔負けの人気ぶりだったと、美玲が溜め息交じりで、呆れた様に教えてくれた。

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