美味しいほっぺにくちづけて。
ゆっくりと空さんと、私の身体が離れていって、私は、悲しくなった。




空さんは、私の顔を覗く。


私は、びっくりしてふるふると首を振り、困ったように、唇を噛んだ。
空さんの顔を、見たいのにドキドキして見られない・・・





「空さん・・・モテモテだったって聞きました。」




私が七星祭りの時、と空さんに加えると、空さんはハハッと一瞬、笑う。




私も、みんなと七星祭りに参加したかったな・・・と無理なのは承知で、一瞬、ふと思う。
ちょっとだけ、空さんの、そのアイドル級のモテモテぶりを見てみたいとも、思う。




それを見て、私はどう思うんだろう。




「やっぱ、おまえがいないと、つまんないよ。」




「え?」



私が、そんなことを思っているとは知らず、空さんは、ぼそっと呟いた。



何も、言えない私を、ちらっと見る空さん。





「おまえが、慌ただしく仕事してる姿見るの、俺、結構好きでさ。たまに、盗み見るんだ。」



・・・え、盗み見るの?



私は、思わずフッと噴き出す。空さんが、私を盗み見るなんて、すごくおかしいんだもん。




「なんか、必死でちょこまか動いてるよな、いつも。いつも、精一杯。いつも、頑張ってる。・・・なんか、俺のツボでさ。必死なのに、笑顔を振り撒くし。・・やられた。」




「へ?」


 


「おまえってさ、俺をよく擽(くすぐ)るよな。」



空さんは、私の手をゆっくりと取ると、隅っこに私を連れて来た。
あんまり、擽るなよな、と言って。




「俺は、七星祭りでたくさんの人にモテるより、小海にモテたい。」



「へ?」



キャーキャー言われるのだって、どうでもいいと、空さんは、笑っている。



私、へ?しか言ってない気が。


< 88 / 231 >

この作品をシェア

pagetop