美味しいほっぺにくちづけて。
空さんをじっと見つめてしまうと、空さんは、手を首の後ろに当て、そっと私から視線を移した。




その視線をどこに向けようか迷っている感じがした。




「送ってくよ。」




空さんは、私から持っていたかばんをひょいと自分の手に持って、行くぞっ、と私の頭にひとつ、掌を載せた。




空さんの後を、急いで追う。




私は、慌てて空さんの着ていた服をぎゅっと掴む。
空さんは、私が掴んだ反動で、足を止めた。




「空さん! 迷惑になっちゃいますから、自分で帰ります!」





空さんも今日、仕事だったんならきっと、疲れてるはずだもん。




空さんの負担になりたくないし・・・





「もう夜も遅いんだし、こんな暗い中、女ひとりじゃ危ないだろ。」




いーから送られろ、と空さんは、一瞬私のほうを向いて私の手を掴んだ。





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