一つだけ願いが叶うなら
愛『沙羅さん、零央を幸せにしてあげてください。』


私が発した言葉の後、しばらく沈黙が続き、奥様?と呼んだ後、愛叶さんは一言そう言った。


私は余りに予想と違う態度と言葉に戸惑い、つい聞き返してしまった。


でも愛叶さんはそんな私にも動じず、ゆっくり話し始めた。


愛『分かっていました…。

零央に大切な人がいることは。

こんな日がくることも。

零央の幸せを私は一度奪ってしまった。

二度も奪いたくはない。

政略結婚という鎖に零央を縛り付けしまっていた。

だから…沙羅さん…零央を幸せにしてあげてください。

よろしくおねがいします。』


愛叶さんはその言葉を最後に電話を切った。

ツーツーという機械音が聞こえてきたが、私はそれどころではなかった。
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