甘やかな螺旋のゆりかご
どんな辛辣な言葉でも、絶縁も覚悟したというのに、妹はわたしを受け入れてくれた。だから、わたしは妹の不幸に繋がることはしない。それは兄にも通じるもので、もう誓っていること。
「ごめんね。悲しい顔をさせて。でも、この家を滅茶苦茶にはしないから、安心して」
妹は言う。そうではないのだと。そんなわけない。家族を壊してもいいなんて思っていないのに妹はわたしを。
「違うよ、お姉ちゃん。あたしは、お姉ちゃんが心配なの。いつか壊れてしまわない?あたしはお姉ちゃんが悲しむ原因のひとつじゃないかな?」
妹は自分も恋を知ったからだと言う。家族が大好きだからだとも言う。ちくはぐでもなんでも、妹はわたしを認め、恋をするわたしを綺麗だと言ってくれる。
そうして妹は泣くのを堪え、自分のせいでわたしが傷付くのではないのかと言ってくれるのだ。
ホットミルクの入ったカップを握りしめたまま動かなかった妹の手を、そっとわたしのそれで包む。こんなわたしの手では妹に失礼だけれど、その赦しには抗えなかった。
あなたはわたしの宝物よ。あなたがいてくれて救われている――全て、どうか伝わりますように。
「わたしの想いを知って、気持ち悪いと言わないでいてくれた」
「そんなこと、思わなかったよ?」
「ずっと、支えのひとつだったわ。けど、いつかあなたがそれを後悔しなければいいって今でも思ってる」
「思わないっ」
「血液を一滴残らず交換出来ればいいのにって言ってくれた」
「だって、そうしたらお姉ちゃんはもしかしてっ……」
「幸せな夢ね」
そう。わたしは幸せなのだと、伝わりますように。
「真っ当な恋をしてくれているあなたに救われてる。恋するわたしを、ずっと狂ってる愚かなわたしを、あなたはそれでも綺麗だと言ってくれた。報われないし辛いだけだけで、でも裁ち切れないわたしなのに、誰かひとりにでもそう見えていてくれることに、どれだけ涙したことか――でも、本当にごめんね。こんなお姉ちゃんで」
妹にまた抱きしめられると、気付けばとうにバレンタインの真夜中だった。