あと少しの恋
「くくっおまえが反応いいからだろ
さてとそろそろ帰るぞ
明日も仕事だろ?」
私は頷かずに勇気をだして言う
「もっと一緒にいたいです」
「どーすっかな
可愛い子羊ちゃんの頼みだしなぁ」
ピラピラと伝票をひらつかせながら希瀬さんが言う
希瀬さんは悩みながらも頷いてくれた
ファミレスを出てタクシーに乗り込む
「迷ってます?」
「なにが?」
希瀬さんは一瞬、迷っていたようだが頷くとある住所を告げた
その場所は私の家ではない
着いた場所はマンションだった
「あのここって」
「まあ家だよな」
「えっ···」
「義兄貴とは暮らしてないんだけどあんまオススメしたくないんだな」
「部屋が汚いとか?」
「仕事であんま帰んないからな
汚くはない」
じゃあなにがダメなんだろう
私は悩みながらもエレベーターに乗ってついていった
501のドアを開けるとふてぶてしく猫が鳴いた
「おまえ猫は平気か?」
「あっはい」
「だからあんまオススメしたくなかったんだこいつがいるから」
首根っこをつかまれニャアと不満の声をあげるシャム猫
「でもかわいいですよ」
「雨の日にさぽつんと玄関前でふるえてたんだ」
希瀬さんはシャム猫を抱きかかえながらそう言った
「優しいんですね」
「さあな」
猫はニャンと鳴いて部屋の奥に行ってしまった
電気をつけるとやっと部屋がよく見えるようになる
「きれいな部屋ですね」
「ただなんも置いてないだけ」
それでも整理されたキッチンと部屋は清潔感に溢れていて私も見習わなきゃと思う
「えっ···」
「正直に言うわ俺ずっとこうしたかったおまえと」
いきなり抱きしめられて鞄が音をたてて床に落ちる
「希瀬さん···」
「なに?」
希瀬さんは首筋にキスをしてきた
「明日も仕事なんですよ」
それにもかまわずゆっくりと鎖骨を撫でる細い指
「だよな悪い」
離れようとした希瀬さんの左手を掴んでひきよせるとキスをした
「ごめんなさい」
「どっちなんだよおまえ」
ったくとか文句を言いながらも私をソファーに押し倒した
片手だけだけど力あるなぁなんて思いながら真下から希瀬さんの目をみつめた
「···」
「はじめてこういうの?」
「はい」
「じゃあなるべく優しくリードするよう頑張りますか」
希瀬さんはそういうと私の手の甲にキスを落とした
つながりたい気持ちと怖さは一緒でゆっくりと服を脱がされていく
「希瀬さん···」
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